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[DT] ARG(代替現実ゲーム)の作り方 -ストーリー創作術(3)-

ARG(代替現実ゲーム)の作り方 -ストーリー創作術(3) 分岐-

ARG(代替現実ゲーム)の作り方 -ストーリー創作術(3) 分岐-

 ARG(代替現実ゲーム)のストーリー創作術。過去の2回では、箱書き(第1回)からストーリーの断片化(第2回)へと創作を進めることで、プレイヤーにストーリーの再構築を促し、それが結果的にプレイヤーの現実を侵食する代替世界の構築につながるという考えをご紹介しました。
 しかしながら、ストーリーの断片化が生むものは個々人の解釈差によるゆらぎであって、ストーリー上の決定的な分岐ではないとも言えます。同時に『長期型ARGを定義する3つのポイント』で定義したように「プレイヤーの意志決定(選択)によってストーリーの結末、展開が変化すること」は、ARGの重要な要素であり、大きな魅力のひとつです。
 そこで第3回目となる今回は、ARGにおける分岐についてまとめてみます。


ARG(代替現実ゲーム)における分岐の種類

 まず最初にARGで使われる分岐の種類を書き出してみます。

  1. どちらを選んでも、実は未来は(ほぼ)同じ
  2. 一方が選ばれるまで、実は何も進展しない
  3. 選択結果によって、展開(結末)が変化する

 ここで(1)と(2)のパターンを見て「それは分岐ではない」と思ったかもしれません。その考えはまちがっていません。ですが「未来に何が起きるかわからない」という前提を共有しているARGにおいて、これらのパターンはとても使い勝手のよいものです。なぜならプレイヤーに一定の選択を与えつつも、ARG制作者はストーリーの流れや、その先で使うガジェット(小道具や映像)を変更しなくても良いからです。

 もちろん(1)と(2)を実施するには「実はどちらを選んでも未来は変わらないのではないか」といった疑念をプレイヤーに持たせないストーリーが必要となります。その点を踏まえると(1)と(2)は、使い勝手はよいがストーリーの作り方が難しいパターンと言えます。

 そして(3)が、一般的に「分岐」と認識されているパターンでしょう。こちらのパターンは、プレイヤーに自分の判断で代替世界の流れが変わったと感じさせることができるため、ARGにおいては極めて有効です。ですが、これは使いどころがとても難しいパターンです。なぜなら、この種類の分岐は「やり直せない選択をするもの」だからです。

 当然、ARG制作者もストーリーを分岐の数だけ用意したり、アドリブで対応したり、将来使うガジェットを用意し直したりする必要があるため、(1)と比べると労力は単純に倍以上となります。そう考えると(3)は、代替世界の構築にもっとも有効だと認められているものの、ARG制作者の負荷が高く実現が難しいパターンと言えます。

 また(3)のパターンは、再演やリプレイが行われないというARGの特性上、選択されなかった未来(準備した代替世界)が表に出ることはありません。このため限られた制作時間や費用を捨てることになる点も実現を難しくしている理由だと考えます。


ARG(代替現実ゲーム)制作者はどこまで分岐を準備しておけばよいか

 ここまで代替世界への没入感を高めるために有効な分岐の準備が難しいことを説明してきました。ではARG制作者はどこまで分岐を準備しておけばよいのでしょうか。

ARGのストーリー創作術 3幕構成 | だいたい現実

 その答はARG制作者の時間と費用の許す限りではあるのですが、(3)のような決定的な分岐はストーリーの3幕構成のうち、プロットポイント1で1回、2幕中盤のミッドポイントと呼ばれる転換点に1回、プロットポイント2で1回の計3回が、ストーリーの構成上からもARG制作者の負荷からも妥当な最大分岐回数と考えます。

 その上で分岐した先のストーリーをどこまで準備しておくかですが、この点については「箱書きレベルでは必須」「ガジェットの準備が必要な場合は、そこに必要な情報をすべて」と考えます。これはストーリーの軸をぶらさないため、またガジェットの制作には一般的に時間がかかるために必要となります。

 これに対して代替世界のキャラクターの受け答え(リアルタイム対応)については、ストーリーの骨格さえ固まっていればアドリブでもなんとか対応はできますし、そもそも想定どおりに会話が展開しないことがほとんどですので、スクリプト(台本)を用意する必要はないでしょう(役者を使った寸劇をする場合は、簡易でもスクリプトが必要となります)。


最後に

 どうしてARGが他の体験型イベント(謎解きイベント)と比較して制作されないのか。その1番の理由が、この「ストーリーの分岐がもたらす代替世界への没入感」と「制作者や意思統一をしなければいけないプレイヤーの負荷」のバランスが負荷側に寄りすぎているからだと僕は考えます。そして、その問題を解決するのが、第2回で提示した断片化による選択ルートの増加と、今回提示した重要なポイントに絞った分岐の設定とパターンの応用です。

 先に挙げた「どちらを選んでも、実は未来は(ほぼ)同じ分岐」について反発を覚える方もいるかもしれません。ですがARGの作り出す代替世界が一過性のものであることを考えると、大切なのはネタを明かしたときの感情ではなく、いかにそう感じさせないストーリーを練り上げるかではないでしょうか。みなさんは、どう考えますか?


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