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ARG(代替現実ゲーム)の作り方 -ストーリー創作術(2)断片化-
前回のストーリー創作術では、シド・フィールドが提唱する映画脚本の3幕構成を元にARG(代替現実ゲーム)のシナリオ、その中でも僕が特に重視している箱書きについてご紹介しました。その際、かなり忠実に3幕構成で脚本が作られている映画『マトリックス』とARGの箱書き例を並べて比較することで、シナリオ構成におけるおおよその感覚が理解いただけるようにしました(伝わっていると良いのですが…)。
ですが、映画のようにただ直線的にストーリーを並べただけでは、ARG的な代替世界は生まれません。なぜなら、そこにはプレイヤーがストーリーを再構築するプロセスが欠けているからです。そこでARGストーリー創作術の2回目となる今回は、ARGの特徴とも言えるストーリーの断片化と、断片化されたストーリーの再構成が代替世界の構築に関与しているのかを中心にまとめてみたいと思います。
ストーリーを断片化し、代替世界に配置する
上の図は前回提示したARGの箱書きの第1幕部分です。確かにこのままストーリーが展開するとしたら、よくある1本道のアドベンチャーゲームです。そこで、この箱書きの中にあるストーリーの構成要素をさらに深掘りした上で断片化してみます。
いかがでしょうか?
今回の例ではストーリーの構成要素をARGらしく「3つのTwitterアカウント」と「1つのWebサイト」に断片化してみました。このようにストーリーを断片化すると…
- 代替世界とプレイヤーの接点が増えるため、どの接点から代替世界に入ったかでプレイヤーの体験に違いが生まれる
- プレイヤーが自分の見つけた接点以外の接点を認知したとき、自分を取り囲む代替世界の拡がりを感じることができる
- それぞれの接点から得た情報を整理・統合する際にプレイヤー自身が考えて答を出したというドラマが生まれる
と言った効果を与えることができます。
その結果、プレイヤーは最初の箱書きに書かれた記載順ではなく、自分が体験をした順にARGのストーリーを再構築します。つまり、アカウントAを通じて代替世界に入ったり、Webサイトから代替世界に入ったり、あるいは既に遊び始めていたプレイヤーの情報から代替世界に入ったり…というような違いや、その次に得た情報の違いが幾重にも重なってプレイヤーごとのストーリーがある代替世界が構築されるというわけです。
同時に不明瞭な情報や、この段階では解決できない問題(場合によっては最後まで答を明示しない問題)を残しておくことで、その欠けた代替世界のストーリーを補完したいという欲求をプレイヤーの中に生じさせることもできます。今回の例で言えば「アカウントA、B、Cの関係」や「RLSは何の略なのか」や「残された14人の男に入力するパスワードがどこかにあるのではないか」との疑念はプレイヤーの知的好奇心を刺激し、ここでも独自の解釈によって代替世界のストーリーが再構築されます。
こうして1本道に見えたARGの箱書きは、断片化されたストーリーを再構築する過程を通じて、独自のゆらぎや複雑さを見せ始めるのです。
代替世界の構築に箱書きと断片化が必要な理由
これまでの2回で「箱書き」と「断片化」の2つの過程をまとめてみました。ところで、どうしてこの2つのステップがARGのストーリーを創作する上でポイントになるのでしょうか。ARGの特徴だけを考えれば、頭の中にあるあらすじをいきなり断片化しても問題ないように思えます。もっと言えば断片化した情報を散りばめておけば、考古学的な発見を通じてプレイヤーがストーリーを想像してくれるのではないかという考え方もあります。
このことについて僕は、ARGのストーリーには「わかりやすい展開と見た目の複雑さが大切だから」と考えています。これまでの例で言えば、ARGで代替世界を構築するためにストーリーを断片化する行為や、そこに仕掛けられる謎や隠喩の数々は、まさに見た目の複雑さを指しています。一方で、それらの行為や謎を仕掛ける登場人物の動機や行動理由がわかりやすくなければ、たくさんの人の共感を得ることはおろか、ARGの進行に余分な疑念を抱かせてしまい、プレイヤーは何をすればいいのかわからなくなってしまうでしょう。
つまり、箱書きでストーリーの展開や登場人物の動機をわかりやすく整理しておき、断片化で秘密めいた要素を散りばめて想像力が働く余地を作り出しておくことで、プレイヤーから見れば「断片化された情報を集めて想像した結果、ある意味、人間くさい動機やお約束的なわかりやすさを持ったストーリーが浮かび上がる」というわけです。
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