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ARG(代替現実ゲーム)の悩み | だいたい現実

ARG(代替現実ゲーム)の悩み – 混乱が引き起こす代替現実の崩壊 –

ARG(代替現実ゲーム)の悩み – 混乱が引き起こす代替現実の崩壊 –

 ARG(代替現実ゲーム)に不可欠な代替世界を作り出すために、ARG制作者が留意すべき点を端的に示した言葉がTINAG(This Is Not A Game)です。

 ARG制作者は現実を代替世界とするために、ゲームに登場するキャラクターやガジェットが実際に存在しているかのようにすること(例えばARG中で提示された電話番号に電話をかければキャラクターと話すことができるようにすること)に腐心します。
 だからこそARG制作者は、表出した情報がゲームのものであるかどうか断定することを避けようとします。

 しかし、そうやって作られた代替世界が、プレイヤーの手で簡単に崩壊させられるような脆いものでもあると言ったら、あなたはどう思うでしょうか?


代替世界を否定する公式サイトに提示されたあるメッセージ

“We don’t want people getting too confused, thinking that these are actually from the Godzilla viral marketing campaign.”
(私たちは『ゴジラARG』の情報そのものに見える映像が、プレイヤーを混乱させることを望んではいません)

“For a full list of officially released images, videos and information from the M.U.T.O viral marketing campaign, be sure to check out this thread in our forums.”
(M.U.T.O. バイラルマーケティングキャンペーンとして公式にリリースされた画像、ビデオおよび情報については、私たちのフォーラムやこちらのスレッドで確認してください)

 このメッセージは、当ブログでもご紹介した『MUTO research.net(別名:ゴジラARG)』の公式ページに掲示されたものです。

 きっかけとなったのはユーザーが作った1本のムービーでした。そのムービーは、公式ムービー(と言ってもARGの仕掛けですので出自は定かではありません)と同じYouTube上で公開され、ゲームに登場する謎の組織『M.U.T.O.』のロゴ、そしてARGの舞台となった世界を連想させるナイトスコープビジョンらしき映像が収録されていました。

 このパロディムービーを作ったユーザーはゴジラ(ARG)が嫌いだったのでしょうか? むしろ好きだったからこそ、公式と遜色のない完成度のムービーが作れたのでしょう。

 ですが、彼の作ったムービーはARGプレイヤーたちを混乱させるものとして、制作者が今後の情報の出所を明言せざるを得ない事態を招きました。おそらく、それは制作者の本意ではなかったでしょう。なによりも、この公式メッセージが、このARGの代替現実感を減少させる方向に働いたことは確かです。


This Is A Game -混乱によって矮小化する代替世界-

 音声やムービーの配信、暗号化されたWebサイト、Twitter上で会話ができる「生きている」キャラクターたち。
 インターネットの普及は、ARGに不可欠な代替世界の構築を容易にしました。一方でその容易さは、ARGプレイヤーに同じような代替世界を複製する力も与えました。

 複製者が自らをパロディだと認めているのであれば問題は小さいでしょう。しかし、複製者が黙して何も語らなければ、ARGの持つ代替現実感を高めるための曖昧さが本物と偽者の区別を困難にし、結果、他のプレイヤーを混乱させます。そしてその混乱は、ARG制作者に「コントロールのできないもうひとりのARG制作者」と「混乱したプレイヤー」への対応を余儀なくさせるという負担を強います。

 このページの冒頭で、TINAG(This Is Not A Game)とは代替世界を作り出すためにARG制作者が腐心するものだと書きました。反面、このTINAGという言葉を「規制のあるゲームではないからARGプレイヤーはあらゆることを試すことができる」から転じて「ゲームではないからARGプレイヤーは何をしてもいい」と取る向きがあります。

 僕はARGの自由度が好きです。ですからARGプレイヤーの行動を可能な限り制約するべきではないと考えます。しかし、だからと言って「ARGプレイヤーは代替世界でなにをやっても許される」とは思いません。もし、あなたがTINAGに腐心しながら作られた代替世界を楽しみたいのであれば、同じようにその代替世界を楽しもうとしている他のARGプレイヤーを混乱させるような行為は適度な線引きでコントロールすべきです。

 そうしなければ、代替世界の話題が「こちらは本物」「あちらはニセ者」と常に出自の真贋を問うことばかりとなり、急速にその魅力を失ってしまうでしょう。


最後に

 ARGは世界を代替するためにインターネットを情報網の中心に据えます。それはインターネットのある世界が、ARGプレイヤーに取って現実世界の延長だからです。同時にインターネットは嘘をつきやすい場所でもあります。
 TINAGは代替世界を作り上げる上でのARG制作者の心がけですが、その代替世界を支えるにはARGプレイヤーにも共創の意識が必要だということをこの事例は示しています。


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