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短期型ARGを定義する2つのポイント | だいたい現実

短期型ARG(代替現実ゲーム)を定義する2つのポイント

短期型ARG(代替現実ゲーム)を定義する2つのポイント

注)こちらの短期型ARG(代替現実ゲーム)の定義については、先に投稿をした『長期型ARG(代替現実ゲーム)を定義する3つのポイント』をベースとしています。
またARGの系譜から見ても、長期型から短期型への流れが顕著になっている事象がありますので、もしお読みでなければ先に上記の投稿をお読みになることをお薦めします。


長期型ARGの問題と短期型ARGの台頭

 先に記載した長期型ARGの定義の第1項として「プレイヤーの意志決定によってストーリーの結末、展開が変化する」を挙げたように、長期型ARGでは強い代替現実感を持たせるためにストーリーが必須とされてきました。

 しかし、その一方でストーリーがあるために「途中参加がしにくい(進行したストーリーに追いつくのが大変・できあがっているコミュニティに入りにくいなど)」や「ストーリー間の空き時間にARG自体のあら探しを始める」と言った問題が起きていました。

 その長期型ARGの問題を解決する方法として、42Entertainment社が2009年に編み出したのが、3日〜1ヶ月程度で完結する短期型のARGです。そしてこの短期型ARGが現在ではプロモーションARGの主流になっていると言っても良いでしょう(このブログで紹介している『MUTOresearch.net ARG』も短期型ARGの定義に沿っています)。

 以下では、そのような形で登場した短期型ARGを2つの成立要件から定義します。
 なお、定義を考察する際には「プレイヤーの主観的な感覚(感情)を軸とする考え方」と「プレイヤーの主観的な感覚(感情)とは関係なく、ARGが持つ構造を軸とする考え方」の2つがあると考えますが、今回は後者のARGが持つ構造を軸に定義を考察しました。

短期型ARG(Alternate-Reality-Game / 代替現実ゲーム)の定義

  1. 短期型ARGではストーリーよりもプレイヤー同士の潜在的な認識が重視される
  2. 短期型ARGではインターネット中心の接点から情報が連続して投げかけられる

 次項では、それぞれの要件について補足をしていきます。


短期型ARG(Alternate-Reality-Game / 代替現実ゲーム)の定義を分解する

1. 短期型ARGではストーリーよりもプレイヤーの潜在的な認識が重視される

 この要件は長期型ARGと短期型ARGを区分する重要なポイントです。つまり短期型ARGではゲーム内でのストーリーを希薄にする反面、プレイヤーがそのARGに対して持っている潜在的な認識をバックボーンとすることで、短期間でARGの目的(ゴール)や世界観をプレイヤーに理解させています。

 具体例として、この短期型ARGの先駆者となった『Flynn Lives(2009 : 映画『TRON: LEGACY』のプロモーションARG)』と『Destiny(2013 : ビデオゲーム『HALO』で知られるBungie社の新作ゲームプロモーションARG)」を元に考えてみましょう。

 まず『Flynn Lives』の場合、映画関連のWebサイトに最初の謎が投下されてから結末までわずか3日間と言う速さでARGは進行しました。ですが、そこは「フリンのゲームセンター(前作である映画『トロン』の主人公の名前と、主人公が左遷させられた職場)」やWebサイト「Homeoftron.com」と言った映画『トロン』を想起させる仕掛けが散りばめられており、ストーリーがなくてもプレイヤーはおよその目的(ゴール)や世界観を認識することができました。

 また『Destiny』の場合、完全な新作ゲームでしたので『Flynn Lives』のようにプレイヤーに潜在的な認識はありませんでした。このため制作者はBungie社のファン向け掲示板に最初の謎を投下しました。なお、Bungie社は世界的にヒットしたビデオゲーム『HALO』の開発会社です(わかりやすく例えるならば、任天堂が新作のタイトルを明かさずにファン向け掲示板に謎を投下した状態です)。つまり『Destiny』の場合は、Bungie社と言う会社のブランドをプレイヤーの潜在的な認識材料としたわけです。ですから、プレイヤーにはBungie社の新作に関連したARGであることは最初期から認識されており、やはりストーリーがなくても目的(ゴール)は認識されていたと言えます。

なお、この他の方法としては「新作映画のWebサイトで世界観を共有しておきつつ、ARGを展開する」と言った、いわゆるCMやWeb施策と連動することでARG側のストーリーを希薄化させる方法も短期型ARGでは多く利用されます。

2. 短期型ARGではインターネット中心の接点から情報が連続して投げかけられる

 短期型、長期型に関わらずARGでは、意図的に断片化した複数の情報がプレイヤーに投げかけられます。長期型ARGではこれらの情報を少しずつつなぎ合わせることで世界が構築されていく感覚をプレイヤーに与えるのに対し、短期型ARGではこれらの情報を連続して投げかけることでARG全体のテンポを良くし、プレイヤーのARGに対するモチベーションの維持を図っています

 また、素早く展開すると言う短期型ARGの特性から、インターネット上の接点(Webサイト、メール)を利用することがほとんどです。この点もプレイヤーの身近にある様々な接点(電話、ポスターなども含まれる)を利用しようとする長期型ARGとは、スタンスも含め、異なっている点だと考えます。


最後に

 短期型ARGの定義を考える上で注意したいのは、短期型ARGではARG内でのストーリーを希薄化する代わりに、外部にあるストーリー(前作・原作・ARG後にあるイベントの物語)や、ブランドストーリーが必要になると言う点です。
 つまり、短期型ARGを実施するには、よりわかりやすいストーリーがARGの外部に必要となるわけです(よってARGにストーリーが不要と言う説に僕は否定的です)。

 また、短期型ARGはプレイヤーが参加しやすいと言う利点を得た反面、プレイヤーとARG(および、その先にあるプロダクト)との結びつきは長期型ARGに劣ると考えます。そう考えると、今後は短期型ARGの構造を取りながら、中長期に渡って長めのストーリーを展開するようなハイブリッド型のARGが生まれるかもしれません。


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